帰化をするためには法律上の様々な条件があります。
ここでは、帰化の条件について解説をいたします。
国籍法の条文に基づいて解説をしているので文章が難しくなっております。
ご相談をいただければ、あなたの状況に合った回答をさせていただきます。
帰化の条件 日本の国籍法では、第5条から第9条において、規定されている。
◎第5条・・・「普通帰化」といわれ、最も基本的な条件であり、住所条件・能力条件・素行条件・生計条件・二重国籍防止条件・不法団体条件の6つの条件を規定している。
◎第6条・・・住所条件が緩和されている。
◎第7条・・・住所条件及び能力条件が緩和ないし免除されている。
◎第8条・・・「簡易帰化」といわれ、住所条件・能力条件・生計条件が免除されている。
◎第9条・・・「大帰化」といわれ、日本国に特別功労のある外国人について、法務大臣が一般の帰化条件にかかわらず、国会の承認を得て、許可するものである。今日までこの適用を受けた人はいない。
◎第5条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
1.引き続き5年以上日本に住所を有すること。
①申請時に5年間継続し、日本に住所を有していないと申請は受理されない。
②申請後、日本に住所がなくなれば、この条件を欠くことになるが、但し、再入国の許可を得た一時的な出入国は住所が日本にある限り、継続している者と扱われる。
③「日本」に住所を有するものでなければならないので、日本国の主権が及ぶ地域(領土)に住所がなければならない。
④「住所」とは、民法第21条にいうところの住所、すなわち生活の本拠を意味し、居所は含まれない。
⑤「住所」は適法な住所でなければならないから、不法な、例えば不法残留者や不法入国者の住所は住所ではない。従って、住所は適法な在留資格を取得した時点をもって住所期間の起算点とされている。
⑥外国人が日本に滞在するには、すべて在留資格を取得していなければならない。
⑦日本に住所があれば、日本国内で転居しても、住所条件に問題はない。
2.20歳以上で本国法によって能力を有すること。
①20歳以上であって、かつ本国法によって能力者でなければならない。
20歳未満の者であって、婚姻によって成年擬制されている国の者であってもこの条件は免除されない。
(参考)韓国では、例えば、19歳の男性と17歳の女性が婚姻すると成年に達したものとみなされ成年者と同じ行為能力が認められる。(大韓民国民法第826条の2)しかし、国籍法では、20歳以上という条件であるので、この男女は、能力条件に該当しない。
②本国法上、妻が限定能力者として扱われている場合でも、憲法第24条、民法第1条ノ2、法令第33条の趣旨から、能力者として扱われている。
③父母と同居している20歳未満の子が父母と共に帰化許可申請をした場合、父母の帰化が認められれば、その子は即、日本国民の子となる。これは国籍法第8条により本条の能力条件が免除され、帰化が認められる扱いになる。(子も父母とともに帰化申請をすることができる。)
3.素行が善良であること。
①この条件の素行とは、抽象的な概念であるから具体的には生活全般からの帰化調査が必要となる。
②職業、経済活動、日常生活、納税義務、刑事、行政法規に対する違反の有無並びに程度等が判断の資料とされる。
③刑事犯で有罪判決を受けた者、執行猶予中の者等については、社会通念上、素行善良とは見られないので、一定の期間を置いて、その事実を悔い改め、再犯のおそれがない状態になった場合でなければ素行善良とはいえない。
④納税義務は、国民の基本的義務のひとつであるから、脱税をする事は容認できない。重加算税の追徴を受けた場合も、その態様、内容、回数等によって可否が判断される。
⑤車の事故、違反については、刑法違反(業務上過失障害等)や道路交通法違反等について、その時期、態様、回数等が斟酌される。
⑥風俗営業法違反等についても、公序良俗に著しく反していると考えられるときは、素行条件に適合しない。
4.自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は、技能によって、生計を営むことができること。
①この条件は、現在及び将来にわたり、公共の負担となるような者の帰化を防ぐための条件である。
②生計を一にする親族には、同居していない者も含まれるので、親の仕送りを貰っている学生も含まれる。 (昭和59年、国籍法改正前は、帰化申請者本人について独立した生計条件が要求されていたが、法改正後は、生計を一にする親族単位に判断することに改められた。)
③扶養される立場にある老親等も生計を一にする親族によって生活を維持していけるときは、この生計条件に適合する。
5.国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によって、その国籍を失うべきこと。
○二重国籍の発生を防止する目的で定められた規定。(申請人が日本に帰化したときは、申請人の申請前の原国籍と二重国籍にならないように定められたもの。第2項に例外規定あり。)
6.日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
○国家共同体の存立上、当然に要求される権利である。
2.法務大臣は、外国人がその意思にかかわらず、その国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が、前項第5号に掲げる条件を備えないときでも帰化を許可することができる。
① 重国籍防止条件の免除についての特則(例外)。
② 「外国人その意思にかかわらず、その国籍を失うことができない場合」とは、申請人の属する国の法制がその者が外国に帰化することによって、その国の国籍を自動的に喪失する事が出来る制度をとっていない場合、または外国への帰化前にその国の国籍を離脱できるという制度をとっていない場合。
③日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるとき」とは、日本国民の配偶者、子等であり、特に日本国との密接な関連があること、または難民等、特に人道上の配慮を要するものであ ることにより、法務大臣が特に帰化を許可することを相当とすると認める場合をいう。
◎第6条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣はその者が 前条第1項第1号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
○第6条に該当する外国人は住所条件が緩和され、引き続き5年以上、日本に住所を有しなくとも帰化申請できる。(但し、申請時に日本に住所を有していなければならない。)
1.日本国民であった者の子(養子を除く。)で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有するもの。
① 「日本国民であった者」には、平和条約の発効によって日本国籍を失った朝鮮人・台湾人は含まれないが、婚姻、認知等により、内地籍から朝鮮籍・台湾籍に移り、平和条約の発効により、日本国籍を失ったものは含まれる。
② 「日本国民であった者」であるかどうかについては、原則として帰化申請の時点で判断される。
③ 「日本国民であった者」とは、かつて日本国籍を有していたものであり、現在日本の国籍を喪失しているものである。
ア)自己の志望による外国国籍の取得による国籍喪失
イ)外国国籍選択による国籍喪失
ウ)催告による国籍喪失
エ)国籍喪失の宣告による国籍喪失
オ)国籍不留保による国籍喪失
カ)届出による国籍の離脱
2.日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれた者。
3.引き続き、10年以上日本に居所を有する者。
① 日本には、住所を有しないが、居所を引き続き10年以上有する場合に適用される。但し、帰化申請時には日本に住所を有していなければならず、居所についても適法な在留資格を有していなければならない。
◎第7条 日本国民の配偶者たる外国人で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本 に住所を有する者については、法務大臣はその者が第5条第1項第1号及び第2号の条件を備えないときで も、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ引き続き 1年以上日本に住所を有するものについても同様とする。
①この者については、国籍法第5条1項1号の住所条件及び国籍法第5条1項2号の能力条件が緩和ないし、免除される。この場合、婚姻期間の長短は問われない。例えば、外国人たる配偶者が引き続き3年以上、日本に住所又は居所を有し、現に日本に住所を有していれば、婚姻期間が2年でも1ヶ月でも申請することができる。
② この者についても、前記の住所条件、能力条件が緩和ないし免除される。
③ 前項と異なり、婚姻期間が3年を経過していれば、居住期間が3年を待つまでも無く、1年でも帰化申請ができるものとした。
◎第8条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第5条第1項第1号、第2号及び第4号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
① この第8条に規定する条件は、「簡易帰化」といわれる場合のものである。
② 本条各号に該当する外国人は、わが国に密接な血縁関係を有する者であるから、国籍法第5条「普通帰化」の条件に比べて、住所条件、能力条件及び生計条件が免除されている。但し、二重国籍防止条件、素行条件及び不法団体条件は免除されない。(国籍法の原則並びに、国家社会の存立に関する重要な条件であるため。)
1.日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有する者。
○ 「日本国民の子」とは、子の父母のいずれかが日本国民であればよい。
2.日本国民の養子で引き続き1年以上、日本に住所を有し、かつ、縁組の時、本国法により未成年であった者。
○ 日本国民との養親子関係が現に継続していればよく、養子縁組後に養親が日本国籍を取得した場合も含む。但し、養子は、縁組成立時にその本国法上、未成年者で無ければならない。従って、成年養子は除外される。(父母が日本国民であるか否かは原則として申請の時点で判断される。)
3.日本の国籍を失った者(日本に帰化した後、日本の国籍を失った者を除く。)で日本に住所を有する者。
① 「日本の国籍を失った者」とは、自己の志望により、外国国籍を取得したため、日本の国籍を失った者や昭和25年12月6日以前に朝鮮人父または台湾人父に認知され、あるいは朝鮮人男または台湾人男と婚姻し、共通法(大正7年法律第39号)によって、朝鮮籍、台湾籍に移り、平和条約の発効によって、日本の国籍を失った場合等である。
②出生により、外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものが、国籍留保の意思表示をしなかった為に日本国籍を失った場合には、本号により、帰化申請することが出来る。但し、その者が20歳未満で日本に住所を有するときは、届出のみによって日本国籍を取得することができる。
③ 平和条約の発行により、日本の国籍を失った生来の朝鮮人、台湾人は『日本の国籍を失った者』に含まれない。
4.日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者で、その時から引き続き3年以上、日本に住所を有する者。
○ 本号は、出生の時から国籍を有しない者、すなわち無国籍者について簡易帰化できるようにするため、昭和59年の国籍法改正の際に新設された規定である。
未成年者であっても帰化により日本国籍取得が可能になった。
◎第9条 日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は第5条第1項の規定に係わらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
○ 「大帰化」とよばれているものであるが、今日までこの規定の適用を受けた人はいない。大帰化の場合であっても、帰化許可の申請は必要であり、帰化の効力は官報に告示された日から生ずるため、他の帰化の場合と同じである。
<2>帰化の効果
(1)帰化の効力発生時期
◎ 法務大臣は、帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければならない。
(法第10条1項)
◎ 帰化の効力は、官報の告示の日、午前0時からその効力が発生する。
官報告示 ⇒ 法務省 ⇒ 法務局または地方法務局 ⇒ 申請者
通 知 通 知 通 知
(2)帰化の効果
帰化を許可された者は、帰化の告示の日から日本国籍を取得し、日本国民となる。
日本の国籍法では、帰化者に対して、帰化後の制限を設けていないので、公法上も私法上も「日本人」と一切区別は無い。(アメリカ、フランス等では、一定の権利制限規定がある。)
(3)帰化後の手続き
帰化を許可された者は、官報告示の日から1ヶ月以内に法務局または地方法務局長が発効する「帰化者の身分証明書」を添付して、戸籍法の定めるところにより、帰化の届出をしなければならない。(戸籍法第102条の2)
帰化の届出は、報告的届出であるので、届出をしなくても日本国籍を失うことはないが、その後の身分関係、生活関係に影響が大きいため、すみやかに届出をすること。
(4)帰化の無効・取り消しについて
1.帰化許可処分の無効
帰化許可処分も重大かつ明白な瑕疵があれば、帰化は無効となる。その場合、「国籍認定の誤り」及び「帰化申請意思の欠如」等が問題となる。
①既に日本国籍を有している者について、帰化の許可がなされたとき。
②帰化の意思が無い者について、帰化の許可がなされたとき。
③申請者が15歳以上の者であるときは、自ら申請しなければならないので、仮に他人によって申請され、これに対して帰化の許可がなされたとき。
④申請者が15歳未満の者であるときには、法定代理人から申請しなければならないが、仮に法定代理人以外の者から申請され、帰化の許可がなされたとき。(法定代理人に代理権が無かった場合)
⑤帰化許可申請がなされた後に、その申請が取り下げられた場合。(帰化意思の撤回)
⑥帰化許可が死亡者に対してなされたとき。
⑦帰化申請は本人の意思に基づくものでなければならないので、第三者の脅迫によって帰化の許可がなされたとき。
⑧帰化の許可は、官報に告示され、その告示により、効力が発生するので、告示された内容と申請者との同一性がない場合。
2.帰化許可処分の取り消し
現行の国籍法には規定がない。 依って、いかなる場合に取り消されうるかについては、行政法上の解釈によるほかない。現在までに帰化の許可が取り消されたことは無い。
3.帰化不許可処分の取り消し
行政不服審査法では、帰化の処分を不服申し立ての対象から除外している。(行政不服審査法第4条1項10号)
しかし、裁判例では、帰化の不許可処分が取り消し訴訟の対象たる処分にあたるとされたものがある。(昭和47年8月9日、東京高裁判決)
以下、判決要旨。
『国籍法3条(現4条)以下および同法施行規則1条(現2条)の規定を勘案すれば、外国人から帰化の申請があった場合には、法務大臣は、これに対して所定の手続きによってなんらかの応答をしなければならないものといわなければならない。このような申請者が所定の手続きに従って申請につき処分を求めることができる場合は、申請者は処分が適法になされることにつき、権利ないし法律上の利益を有するものというべきであるから、もしも申請につき相当の期間内に応答のない場合は、申請者はその救済を求めるため、行政事件訴訟法3条5項、37条により「不作為の違法確認の訴え」を提起することが出来るものというべく、また、申請に対してなされた処分が、その手続きまたは内容において違法であるときは、これにつき裁判所の審査を求めるため、同法3条2項、8条以下により、「処分の取り消しの訴え」を提起することができるものといわなければならない。従って、外国人の帰化の申請に対し、法務大臣が不許可の処分をした場合は、申請者はこれが処分をなすについての所定の手続きの違背または裁量権乱用等の処分の内容についての違法を主張して、その取り消しを求めることができるといわなければならず、ただ、この場合は、法務大臣の裁量権の範囲がきわめて広いので違法の問題を生ずることが少ないにすぎないものといわなければならない。従って、控訴人の本件帰化申請に対する法務大臣の不許可決定は、行政事件訴訟法にいう取消訴訟の対象たる処分というべく、これが処分につき裁量権濫用の違法があると主張して、処分の取消しを求める本件においては、本案につき審理裁判をなすべきである。』
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